あまり「グラフィック(Web)デザイナーです」とは名乗りたくない

仕事で名刺を渡すときは「株式会社○○のデザイナー、△△と申します」と名乗るのだが、この「グラフィックデザイナー」だとか「Webデザイナー」とかいう職業名を自らを指して口にする時の「うすら寒さ」が、最近ますます気になってきた。

クリエイター、デザイナー、イラストレーター

…などと名乗ったり呼ばれる羽目になるのだが、正直これらの職業名を言葉にしたときの「うさんくささ」には、未だに慣れない。社会人1年目くらいまでは、その肩書きのイケイケ感がうさんくささを上回って「おぉ…」と感じてもいたが、数年も持たない効能であった。だからpixivのプロフィールでは「クリエーター系」ではなく「専門職」を選んでいるし、この記事をアップしたらブログ内での職業名も修正するつもりだ。

これらの横文字職業名には、「ボクちゃん、なんと、あの、皆が憧れる “グラフィック・デザイナー” (!)なんですよォ!」などと言っているかのような「なんだかよくわからないが、多分すごいのだろう」的な雰囲気が含まれている。医者や弁護士に比べたら明らかに勉強量は少ないし、厳しい肉体労働でもないし、人の命がかかっているような重大な仕事でもないのだが、なんとなく「『夢を叶えていてすごいですね』と社交辞令を言わなければいけない空気」の蓄積で、すごそうな雰囲気だけは纏っている。

「誰でもできる」と言えるほど誰でもはできないが、といって「選ばれた人しかなれない」というほど厳しいものでもない。グラフィックデザイナーかWebデザイナーなら、適性が壊滅的でない限り、普通に勉強して、普通に就活をすれば、普通になれる職業である。

※有名企業に新卒で行きたい場合と、専業イラストレーターの場合は努力と才能が必要。

※年齢を重ねてから急にキャリア変更で「デザイナーになる」などと言うと、「こいつは良い歳して未だに地に足のつかない子供の夢のようなことを考えてるのか?」と見做されるので、「普通になれる」のは20代までである。

※30代以上でもなれないことはないが、例えば「練習で広告バナーを作りました」「SNSアイコンを描きました」「知り合いの店のチラシを作りました」程度の作品集をデザイン事務所に持って行っても、おそらく専門学生以下のレベルなので、わざわざ扱いにくい年長者を専業デザイナーとして採用することはないと思われる。「デザインが少し分かる営業担当」とか「簡単な資料を綺麗に作れる経理担当」みたいな、元の職業を活かした二刀流路線で滑り込むか、副業で一定以上の「実績」を出せれば糸口はあると思うが、それでも年収が大きく上がることは期待しない方がいい。

なんちゃらディレクター、エグゼクティブなんとか

「コミュニケーションなんたら学部」とか「グローバルどうのこうの学部」と同じノリなのだろうが、こういう横文字の肩書きがデザイン・IT系にはやたらめたら多い。私個人がなるとしたら「クリエイティブディレクター」「アートディレクター」よりも「企画制作部 部長」の方が気質に馴染むし、親族にも安心して名刺を見せられるのだが、この業界はそうでもない気質の人が多いのかもしれない。

ITは外国発祥なので、単に海外の呼び名をそのまま踏襲しただけかもしれない。しかし、デザイナーとかイラストレーターは日本でも「看板書き」「画家」などがいたのだから、いったいどうして横文字になってしまったのだろう。邪推なのだろうが、あまり勉強はよくできず、陽気なキャラクターでもないために「クリエイティブ」に逃げてきた者たちが、なんとかオリジナリティがあって見栄の張れる肩書きを探す中で、自分を評価しなかった日本社会への敵意と海外かぶれも含んだ結果、空々しい横文字になってしまった…そのような気すらする。

私がいつもお世話になっている協力会社の方の肩書きも「エグゼなんたららー」なのだが、あんなに頼れるマトモな人がロックマンみたいな肩書きというのは、なんだか違和感があるものだ。

図版制作、画家

では横文字を使わずにどう表現するか?普通に考えれば「デザイナー→図版制作」「イラストレーター→画家」が自然だろう。デザイナーは「はやらせ物描き」という表現も考えたが、あまりにも伝わらなそうなのと、皮肉が入り過ぎているので見送ることにする。

「デザインは日本語にすると設計なので、単に図版を制作するのはオペレーターだ」とか「イラストレーションはあくまでデザインの中に入っているものなので、絵画単体で芸術表現を行う画家とは異なる」などの苦情もありそうだが、取り急ぎこのブログ内で私の職業名を横文字表記にするのをやめたいので、プロフィールには「図版制作 兼 画家」と書いておくことにする。

【2022.08.07 追記】「図画設計士」という表現を思いついたので、更新しました。