サンライズ瀬戸で一人旅 香川&愛媛

久々に一人旅に行きたいな

夫と同居して8ヶ月。気を遣わない&気の合う奴で居心地は大変良いが、私という人間は、たまに一人の時間が必要なのである。夫と居続けると、ではなくて、人間と居続けると、そのうち離れたくなる時が来るのだ。

これまでの旅でまだ一度も行ってない国内エリアは、中国地方、四国地方、沖縄、東京島嶼部だ。また、最近のマイブームである鉄道旅の要素(特別な電車に乗る)を組み込みたい。それで、首都圏から香川県までを繋ぐ寝台列車「サンライズ瀬戸」で四国に行ってみるプランになった。

ゴールデンウィークまでは待てなかったので、春分の日の三連休を利用して行くことにした。

  • 3/18(金) 仕事後の夜に寝台列車で出発
  • 3/19(土) 朝から香川観光
  • 3/20(日) 愛媛観光&夜に飛行機で帰宅
  • 3/21(月・祝) 仕事に向けて休む

往路がサンライズ瀬戸、復路がJALで羽田空港に帰ってくる。これはとても贅沢で最高なプランである。

サンライズ瀬戸のチケット

サンライズ瀬戸はかなり人気があり、連休はチケットの争奪戦必至との前情報を得たので、某駅みどりの窓口に発売日の朝早めに並び、無事に確保できた。私が買えた直後に即売り切れたので、全国で一斉にボタンが押されたのだろう。B寝台シングルの、なんと一号車海側二階席をゲット。ウルトララッキーである。受付のお姉さんに感謝!

金曜夜、雨の中出発

当日は出社時刻を早めてその分早く帰り、家で軽食と風呂を済ませてから横浜駅に向かった。雨が降っていたが、列車は特に乱れなく運行していた。横浜駅構内のNEWDAYSで夜食のおにぎりやホットドリンクを買い、サンライズ瀬戸を待つ。

そしてついに、憧れのサンライズ瀬戸に乗ることができた。個室に入ってさっそく横になってみると、心地良く寝れそうな感じだったので一安心。あいにくの天気ではあったが、左側に大きな窓があるので仰向けに寝ると空が見えるのが素晴らしい。

小田原、湯河原、熱海と海っぱたを走っているので、窓から海が見えた。黒い海が、黒い空と一体化して見える。日中に見る海も広いが、夜に見る海はさらに遠く、深く、果てがないように感じる。思わず「まあ、なんて素晴らしい」と声に出てしまった。海と空の深さを目の当たりにして、人間の活動が小さい事を改めて思い出した。そして、これからの人生は何でもできること、どうにでもできることを思い出して、すがすがしい自由を感じた。

親切なことにコップや寝巻きも置いてあった。もてなされた感があって嬉しい。寝るのが若干勿体無いが、明日は朝から観光に歩き回るのだから、しっかり寝ておかなければならない。

会社ではそれなりに頼りにされ、夫は雨の中駅まで送ってくれて、そして一人旅でサンライズに乗っている。なんと幸せなことだろう。私にとって一人の時間とは、いろいろな感情を「かみしめる」のに必要なのだと思った。…それにしても、NEWDAYSの「漬けまぐろおにぎり」美味いな。海苔がわさび味とは革命だね。

一日目 香川県:讃岐うどん&ことでん&金毘羅宮

サンライズ瀬戸で瀬戸内海を満喫

朝6時前にトイレに起き、そのまま起きていた。日の出をバックに瀬戸大橋を渡る景色が見られたので良かった。海といえば、どこまでも広がる太平洋…というイメージだったが、瀬戸内海には小さな島がたくさんあって珍しかった。こういった内海の様子も、地元の人にとっては馴染み深い「海」なのだろう。

サンライズ瀬戸

香川県高松市に到着、朝の街歩き

山芋かまたまうどん(だし醤油をかける前)

朝7:30頃、香川県の高松駅到着。朝食は、駅前のうどん屋で「山芋かまたまうどん」を食べた。本場だからなのか、東京にある丸亀製麺よりも結構美味しい気がした。多分、だし醤油が美味い。うどんとの相性を考えて開発してあるのだろう。

朝食後、のんびり散歩。近くの「高松シンボルタワー」「サンポート高松」に行き、海沿いを歩いて「北浜アリー」を覗いた。

北浜アリーは、古い倉庫か何かの外観はそのままで、中身だけリフォームして店舗などにしている店が10店ほど集まった、ミニ商店街みたいなところだ。普通に見ると「オンボロ」「人が住んでるのか分からないが、謎の主張文が貼ってある“ヤバイ家 ”っぽい」のだが、至るところに手作り感(DIY)があったり、色合いやフォントが若い女性向けだったりして、区画全体で「私たちはオシャレです」という気迫を出し続けていたため、なんとなくオシャレな気もしてこないでもない、そんな場所だった。

カフェで休憩してから玉藻公園へ向かったが、コロナで臨時閉園していたため早めに金比羅宮へ向かうことにした。

ゆるキャラ「ことちゃん」は以前から知っていたので「ことでん」に乗るのは楽しみだった。駅でことちゃんグッズを買い、一時間ほど揺られて琴電琴平駅へ。Suicaが私の改札ミスで使えなくなっていたので急いで切符を買い、直前で電車に駆け込んだが、駅員さんは切符を見ずに「早く早く!」とジェスチャーしてくれた。なんだかあまり厳密じゃなくて平和だな。鹿児島もこんな感じだと思うので、やはり少し田舎の方が空気が張っていなくて過ごしやすい気がする。

発車ホイッスルが毎駅ピーーッ!とけたたましく鳴っていたが、電車内の広告はローカル広告ばかりで平和な雰囲気だった。

金毘羅宮で階段登り

琴電琴平駅前の出店で小腹満たし。たこ焼きのデカい版である「たこ判」を食べた。たこ以外にキャベツや卵も入っていたので、たこ焼きというよりはお好み焼きに近い味だった。

「しあわせさん。こんぴらさん。」というスローガン(?)を掲げる金比羅宮。観光地の神社らしく、入口からずっと土産物店や喫茶店、買い食いの店が軒を連ねていた。良い感じのハンカチや手ぬぐい、イヤリングがあったので購入した。

780段ぐらいの石段をヒーヒー言いながら登ると、本殿が。流石に上段のほうまで行くと木々が増えて、かわりに店は無くなっていく。なかなかの眺めだが、このへんで雨が降り始めてきた。奥にもまだ神社が2~3あるようだったが、階段をさらに雨の中何百段も登るのはきついと判断して降りることとした。私の旅の荷物は少ないとはいえ、駅コインロッカーの存在がアウトオブ眼中だったのが痛かった。ちなみに8年前に日光東照宮に行った時も、同じ見逃しをしながら坂を登っている…。

「しあわせさん。」だの「パワースポット」だの書いてあったり、土産物店にもパワーストーンやら手相やらがいくつかあったのも影響したのか、ふと「この旅は『自分は何が幸せなのか考える旅』だな」と思った。実際のところ、私が旅行をしていて一番楽しいのは、その土地だけの小物やアクセサリーを物色して、その小物がある生活や贈る相手のことを想像している時である。パワースポットに着いた時とか、電車での移動中とか、現地の名産を食べている時ではないのだ。こうなると、旅行が楽しいというよりは、単独行動して離れた場所からその相手や未来を想うことが重要、ということだ。私にとって一人旅というのは、「好きな」ことというよりは、一人思索をするために「必要な」ことなのかもしれない。

ちなみに手相屋に冷やかしで入ったら、その実はパワー系アクセサリー(?)屋で、有名人や経営者が沢山来ているらしかった。デヴィ夫人の等身大パネルがあったが、許可を取ってるのだろうか。話を聞いてみると、私のラッキーナンバーは5で、リーダーシップがあり経営者向きとのこと、ラッキーカラーはピンクと水色とのことだった。そうですか。まあパワースポットとして名高い観光地なので、ここに占い屋を建てるのは正解なのだろう。

予讃線に乗って愛媛方面へ

その後、伊予西条駅という愛媛の入口(香川側)近くにあるホテルまで長々と移動。道後温泉まで行くと移動時間が長くて金毘羅を見る時間が減るのと、道後温泉本館自体は日帰り入浴施設であり、温泉街の旅館に泊まると価格が高騰しているので、今回は中間地点に泊まることにした。ホテル近くのコンビニで手巻きやサラダ、デザートを買い、部屋でくつろいだ。

二日目 愛媛県:道後温泉

松山市の地元感

昨日に引き続き、夜型人間は頑張って早起きし…と言いながら、そんなに起きるのはきつくなかった。ホテルのバランス良い朝食を頂き、松山市へ電車で揺られること2時間。車内では地元の高校生がデカい声で喋っていたが、東京とは違うおおらかな空気感だからか、「静かにせえよ」とは思わなかった。私は子供がそんなに好きではないが、東京や神奈川にいると一層嫌になるのかもしれない。私が子供嫌いというよりは東京や神奈川が子供嫌いなのだし、歩きスマホくらいで人にぶつかるような人口密度が問題なのである。

松山駅、県庁所在地の駅とは思えないほど栄えてなくて逆にビビった。埼玉でいうと川越より栄えてないレベルだ。しかし、道後温泉行きの路面電車に乗り車窓を眺めると、少し離れにある松山市駅あたりが栄えているらしいことが判明。鹿児島駅より鹿児島中央駅が栄えてるのと同じだ。

というか街中の雰囲気が鹿児島市にかなり似ていて、仙巌園と若干雰囲気の近い公園(隣に海だし)や、ミニ天文館と言っていい風貌の「大街道」まである。と同時に、なんとなく千葉や埼玉っぽい印象も感じる。温泉街に向かうにつれて徐々にさびれていく感じも、天文館から祖父母家に向かうバスの車窓とそっくりである…と、松山を褒めてるんだか貶してるんだか、それとも鹿児島の話なのか分からなくなってきたが、とにかく鹿児島生まれで埼玉育ちな私にとって「初めて来たはずなのに、地元のように馴染む」エリアだと感じた。こりゃ移住・永住候補だな。

道後温泉 湯に浸かっては食べてグデグデに

道後温泉の電停を降りたら、急に温泉街が現れた。ダラダラ歩き、道後温泉本館へ行くと、コロナ対策で整理券を配っていた。男はもう整理券は配り終わっていていたらしく、女はまだ券が残っていた、ラッキー。道後温泉本館は建物が激古で一部改修工事中。中に入ると、天井は低く、階段は幅が狭くて段差が高い、いかにも昔の建物だった。

「霊の湯(たまのゆ)」に入ったが、これが予想だにしない気持ちよさだった。今まで入った風呂の中で一番気持ちがよかったんじゃなかろうか。首まで浸かり、思わず目を閉じてニコニコしていてしまった。特に「パワースポット」だなどと期待はしないで来たのだが、場所というよりお湯そのものに力強い気というか、良いエネルギーが漲っているような感じがした。風呂上がりには愛媛みかんジュースを飲み、これまた格別に美味い。想定よりも遥かに良い体験になった。

このへんは「鯛めし」が有名らしいが、それは空港にもあるらしかったので、あえて「鯛めしバーガー」を頂いた。

その後、少し階段を登って「空の散歩道」という足湯へ。結構アツアツのお湯で、これもまた気持ちよかった。この足湯からは、道後温泉本館を見下ろせる形になっていて、地味にフォトスポットとしても有能な気がする。

道後温泉がとても気に入ったため、お土産をモリモリ買い込み、「黒ごまみかんジェラート」や「坊ちゃん団子」を買い食いして、空港行きバスまでの時間を潰した。あと、ここにも手相屋があったのだが、手相を見てアドバイスを受けると2,000円とのことで、流石にやめておいた。

旅の締めは空港

道後温泉から松山空港までは(リムジンではない)通常のバスで約45分、560円。街中から段々寂れて来たかな?と思ったら急に飛行場が出てきたので、こんなに近くて騒音は大丈夫なんだろうかと若干心配になった。そして松山空港の構造が鹿児島空港に似ていてビビる。松山市、鹿児島の弟説(鹿児島空港があるのは霧島市)。空港内のレストランで郷土料理の「鯛めし」と「さつま汁」を食べた。鯛めしはかなり私の口に合っていたが、さつま汁はどうも麦味噌の香りがビールっぽくて苦手な感じだった。夫は好きな味かもしれない。

右奥が鯛めしの出汁卵醤油、中央手前がさつま汁

飛行機で羽田空港に飛び、無事に帰宅できた。飛行機に乗る時は、毎回「墜落する場合もゼロではないんだよな」と人生を顧みる羽目になる。ちなみに京急で帰ったのだが、毎回凄まじい速度ですれ違い、衝撃波のような爆音でビビるのでやめてほしい。

私の幸せって何

さて、金比羅宮の所で書いた今回の旅テーマ「自分は何が幸せなのか」についてだが、こう二日間のことを振り返ってみるとやはり「人情が少し」という感じだろう。人情すなわち人が人を想う心、これが私にとって幸せの源でもあるが、同時に人間に対して「うっとうしい」と感じてもいる。仕事のことを思い出しても、お客さんの所に行って取材するのは悪くないが、展示会などで大勢の人間を前にするのは気が進まない。狭く深く人と関わるのはできるが、広く浅くは昔からできないのだった。

そういうわけなので、私にとって幸せな、言い換えると快適な環境とは、人と関わる機会はありつつも、人口は少ないような場所だろう。逆に、人が大量に歩いていて互いを無視するのが正しいような場所にはいたくない。今住んでいる神奈川県は明らかに後者で、実際に人が多すぎて落ち着かないと感じているので、近い将来やはり松山市くらいの所に引っ越すのが私の希望だ。まぁ夫の意見も聞かないといけないが。

そういうわけで、振り返ると今回もとても良い旅だった。徳島と高知にはまだ行っていないし、夫に松山市も見せたいので、四国にはまた行きたいと思う。