ヘイトクルー10周年

10年前(2013年)の3月16日。当時19歳、うつ病の回復途上にあった私は、ヘヴィメタルバンド・Children Of Bodom(以下COB)の4thアルバム「Hate Crew Deathroll」をTSUTAYAで借り、その夜に通しで聴いた。そして、あまりのかっこよさ、雷が落ちたような衝撃に「このバンドに付いて行かなきゃダメだ!!」と直感したのだった。

それからというもの、COBの作品やマーチャンダイズを買うためアルバイトに励んだり、ライブ遠征をきっかけに一人旅にはまり、様々な土地に一人で行くようになったりした。こうしてCOBを追いかけているうちに体調はすっかり回復。その後、進学・就職・転職・結婚と人生を進めてきたが、今でもやはりヘヴィメタルという音楽ジャンル、メロディックデスメタルというカテゴリ、そしてChildren Of Bodomという(今となっては伝説と化した)バンドを愛している。

「Hate Crew Deathroll」が無ければ、今ごろ私はどういう日々を過ごしていたのか分からない。案外、今と大して変わらないのかもしれない。誰にも分からない事だ。しかし、私にとっては彼らと出会う前の人生は「プロローグ」のようなものだったと思う。それまで何もしてこなかったわけではなく、それどころかある意味では人よりもガンバっていた・・・否、ガンバらされていたという方が良いだろう。・・・何に? それは未来への漠然とした恐怖だ。子供である今でさえこんなに苦しいのだから、大人になれば地獄のような日々が来るのだと思っていた。

COBに熱狂して、たくさん似顔絵イラストを描いた。とにかく、今の熱い気持ちや面白いアイデアを表したくて、毎日一生懸命描き続けた。そうしたら、Twitterで仲良くしてくれる人が出てきた。アルバイト代を貯めてバンドシャツを買い、袖を通した時は最高な気分だった。なるべく前の方で観たくて、夜行バスで名古屋に一人で行った時は、実家が遠ざかる度にこれまでにない安堵を覚えた。

つまり、人生で初めて「本気でやりたいことが自分でできた」と感じたのだ。それまでの圧倒的な無力感に亀裂が入ったのである。そういう意味でCOBは、私にとって「第二の親」とか「精神の親」みたいに表現できる存在だと思っている。

Children Of Bodomは解散し、リーダーであるAlexi Laihoはこの世を去った。今でもよくCOBの曲を聴いているし、部屋の壁にはポスターが飾ってある。COBの曲を聴くと、自分の作品や仕事、人生について「これでいい」と感じられる。歌詞の意味はよくわからず、間違っても癒やしサウンドなどとはかけ離れた音像だが、とかくそのメロディ、リズム、音の重なりと調和に触れると、Alexiの人生を讃えると同時に、自らの人生に対しても肯定的な気持ちになる。

家庭を持ったり、個人で仕事をしようとしたり、私はここ数年で子供から大人への脱皮をしている途中なのだと感じる。COBという親はもう過去の存在になったが、その魂はいつまでも私を見守り支え続けてくれることだろう。


そういうわけなので、毎年3月16日は「COB記念日」「第二の誕生日」として、一人でCOBとの出会いを祝っている。その一環で毎年イラストを描いてきたのだが、今年は10年の節目ということで特別だ。かなり久しぶりに、下書きから色塗りまでアナログ(パソコンを使わず)で描いている。

3月はデザイン業界が繁忙なのと、土日に風邪をひいてしまったので、今年は当日に絵をアップすることができない。4月になってから完成するだろう。完成したら、この記事にその絵の紹介を書こうと思っている。自分で描いた絵の解説なんぞするのは野暮だという考えもあるが、試しに言語化してみようと思う。お楽しみに! どうしても筆が乗らずに精神的負荷になってしまったため、一旦中止とします。再開されて完成まで漕ぎ着ける可能性は30%くらいだと思いますが、このまま終わってしまうのはもったいないなあという気持ちはあります。