さっぱり子供が欲しくならないナゾ

私は「既婚28歳女性」なのだが、まったく子供が欲しいとは思えず、あまりにも「子を持つことへの憧れ」的な感情が湧かないため、ちょっと思考実験でもして己を解剖してみようと思った。

※夫とはマッチングアプリで出会ったが、実子を持たない意思を明記した私のプロフィールを読んだ上で付き合い、互いに了解した上で結婚しているので、現状それによる夫婦間の意見相違はない。

鳥なら良いかもしれないが、憂いもある

もし夫との間に生まれてくるのがヒトではなく鳥で、タマゴを温めると孵る、という方式なら「それなら産んでもいいかもしれない」と思った。これは我ながら非常に驚くべき感情である。他の、ヒトを産みたい女性たちは、こんな感情の強化版を持っているのだろうか?

鳥であれば、かっこいいタカでもかわいい文鳥でも美しいサギでも、オウムでもペンギンでもカワセミでもハトでもハシビロコウでもなんでも可愛いと思う。どんな鳥が出てきても、喜んで餌をやって、寝返りを打てば感動し、喋っても感動し、歩いても感動するだろう。学校に入っても挫折しないように、愛情かけてしっかり育てなあかん、という親心が芽生えるのを感じる。家族でキャンプや遊園地に行きたいし、鹿児島にも連れて行って無邪気に飛び回って(or 歩き回って or 泳ぎ回って or じっとしていて)ほしい。なんだこりゃ?

しかしながら、その息子鳥(娘鳥)は自分や夫が亡くなった後も生きていき、さらにその子も、さらに…と考えていくと、なんだかいてもたってもいられなくなり「やめてくれーーーッッッ!」となってしまう。自分の見えないところで勝手に遺伝子が繋がっていく感じにゾゾっとしてしまう。なんでやねん。しかも最終的には、自分の遺伝子がつながった鳥が、地球最後の大量絶滅に立ち会ってしまうと想像すると、やっぱり「やめてくれーーーッッッ!」となる。

うーん、鳥なら産んでもいいかもしれないが、それでもやはり遺伝子が残ること自体にあまり良い印象がないみたいだ。生物の本能と矛盾する感情でナゾである。

犬や猫だとあんまり…

鳥なら「それなら産んでもいいかも」と思ったが、これが犬や猫が出てくるとイメージすると、急に「…」になってしまった。ヒト以外の動物ならいいわけではないらしい。鳥以外で飼ったことのあるハムスターなら、鳥ほどではないものの「そこまでは悪くない」と思ったので、その動物が好きなのが重要なのだろう。犬猫はヒトよりは可愛いと思うが、飼ったことがないので鳥ほど愛着がないのが原因かもしれない。

ヒトは最も遠慮したい

そして最後に再びヒトを産むイメージをすると「勘弁してくれ」となってしまった。なんでだかは不明だが、ヒトの赤ん坊を見ても、パッと率直に「かわいい」という感情は湧いてこないのである。というか、私から見ればヒトは他の動物種に比べるとあまりかわいくない見た目をしているので、パッと率直に「かわいい」と感じる方がナゾ現象なのだが、それを表で言っても誰も得をしないだろうから、本心はここに書き記すのみである。

ひょっとしたら、女性は赤ん坊を可愛いと思いやすいが、男性は赤ん坊を見て「かわいい」と思う率が、実はそんなに高くないのかもしれない。女性と意見を合わせて気に入られ、付き合いたいがために「俺は子供好きだよ」と言っている可能性がある。

だったら、全体的には少数派とはいえAB型の割合よりは多そうだから、そんなに異常な感覚というわけでもないのだろう。実際、小学校での保育園見学で「キャーッ、かわいい!」と幼児に駆け寄るのは女子だった。私は男子と共にその場に留まり「そんなにかわいいかなあ」と思いながら後をついていったのだから、もし私が男子だったら多数派だったのだ。

私が男性だとしても気が進まない

以上までの文章は「私が女性の身体である」=「妊娠と出産を行うのは自分」という前提があったが、では自分が身籠る必要のない男性であれば感覚が変わるだろうか?

生まれてくるのが鳥で、私が男性の場合を想像してみると、「実親とはいえ、やはり母親と子の繋がりの方が強い。子はかわいいが、なんとなく寂しい。どれだけ養育費を稼いできても、決定的な差があるようで虚しい」というような感じになった。鳥の場合は、父親としてよりも母親として産みたいような感じがする。鳥と思うだけで急にリアルっぽい感情が出てくるのは、自分のことながら全く訳がわからない。

犬猫やハムスターになると、「鳥ほどは好きではないので、父親として育ててもよい」という感情に変化する。なるほど、生まれてくるものへの好き度が高ければ同一化したくなるのか。そしてヒトの場合は、予想通りというべきか「自分が産まないとしても勘弁願いたい」になる。仮に妻(夫の女体化?!)が子への強固な意志を持っているとしたら、渋々検討せざるを得ないだろうが、そういった女性とはそもそも結婚することがないと思う。

鳥は尊いな

「もしヒトではなく鳥が生まれるなら」と想像した時の感情は、ヒトの子供が欲しい人の感情と同じであるような気がする。しかし、その後自分の遺伝子がつながっていく感じにゾゾっとして、いつか絶滅する事実には憐憫を覚えた。だから、子鳥(小鳥とは異なる)との家族生活に憧れはしても、その2つの「やめてくれーッ!」を突破して実際に卵を産む可能性はかなり低いと思う。

私は、道端で鳥を見ると「オォ~~ン(甘美な悲鳴)、なンて可愛いんだぁ…」「君はっ、なんもせんでも最高に素晴らしい存在だねッ!」「でも頭にウンコはやめてくださいね」と感じる。子供が可愛いと感じる人々は、ヒトの子供に対して同じような感覚を持っているのかもしれないな。