女性手帳についての新聞記事を読んで

女性手帳、どう思う? 政府の少子化対策案に批判の声

朝日新聞2013年5月21日朝刊 33面「生活」欄

【女性手帳 どう思う?】を読んでの感想というか考察というか。

女性手帳(仮称)そのものへの考えも書きますが、どちらかというと新聞記事の書かれ方や、私がこの新聞記事を読んで人生について考えたことに重点をおいて述べます。

朝日新聞の記事全文が見られない方には、今回の私の記事は新聞記事からの部分的な引用がある(全文は載せていません・【 】で括っている所です)のでもしかすると印象操作をしてしまうことになるかもしれません、そこはご了承下さい。

私はこの「女性手帳」にはどちらかというと賛成の立場をとります。

「どちらかというと」というのは、そもそも少子化は問題なのか?という考えがあるからです。

人類の歴史の中で戦争や疾病のためでなく自然に人口が減っていくなんてことは今まで無かったんですから不安に感じるのは当然ですが、私は人類の個体数が減ってコンパクトになっていいと思っています。

途上国は人口を伸ばしてどんどん発展している中で日本が少子化したら世界で競争力が下がる、というのは理解できます。

しかし競争力が下がるのと貧しくなるのは違いますし、大事なのは世界で上から数えられることではなくて自分(自国)がより(経済的、精神的、etcに)良い状態になることです。

話がそれましたが、私がこの「女性手帳」に賛成するのには次の理由があります。

1.女性に限らず、正しい知識をつけるに越したことは無いから。

2.それで身につけられた知識を活用して「もっと早く妊娠を考えていれば」と後悔する人が減るならば良いことだから。

1.について、義務教育に盛り込めばいい話だという意見も見られますが、それではもう中学を卒業している人には届きません。

代わりに各地で講習を開くのもアリでしょうが、それは働いている人に都合が付かない場合もあるし、冊子を送った方が好きな時に読めます。

2.は「妊娠するのが必ず良い事で、しないと後悔する」と言ってるのではありません。後述しますがこの「女性手帳」は生き方の押しつけではなく助言のためのものです。

で、ここまでは前置きみたいなものです。本題は①この記事の書かれ方と、②自分の人生についての思いです。

①この記事に見られる誘導について

(1)【この案の報道後、ネットを中心に批判が噴出。】

朝日新聞は読んでいて政府、とくに自民党に厳しいという印象を受けます。どちらかというと左なのでしょうか。

対してネット上では民主党に厳しく右寄りの意見が多く見られます。ネット上の世論調査でも自民党が人気です。

そしてこの朝日新聞の記事は、女性手帳反対の意見に寄っています。つまり私はどういう印象を受けたかというと、

「みんな反対しているよ」ということです。いつもオレたちとは反対の意見を言ってるヤツも、これには同意見みたいだぜ、と。

ネット上の意見についての記述は【この案の報道後、ネットを中心に批判が噴出。】これだけなので、インターネットを利用しない人には「ネット上でも批判が多い」ということだけが伝わります。

【ネットを中心に】というのは、「ネットでの批判の量が最も大きい」という表現です。朝日新聞の記事よりもっと反対の色が強いというイメージになります。

みんなと一緒、みんながそう言うなら…日本人は周りの人と一緒に仲良く暮らしてきた農耕民族なので、多数派の意見に流されがちな所があります。

選挙前に候補者は演説をしますが、働いて子育てもして趣味の時間だって少しは取りたい、そんな中で演説などをしっかり聴いて自分で考えてから投票所に行くのは難しい人も多い。

とりあえず新聞とワイドショーを眺めてちょっと考えて、まあ、と投票所に足を運んでくれれば上出来です。

その投票先を決めるのに参考にする新聞記事がこれくらい偏っていると、ただの報道では済まされないと思います。

(2)そんなことは言ってない

【「『早く産まねば』という女性だけへのメッセージになる上、】

【あと約10年で、仕事も生活も確立させ、出産しないといけないのか】

【政府は、こうした問題に十分に向き合わないまま、少子化を女性の意識の問題にすり替えている。】

【政府が妊娠適齢期に特にフォーカスした手帳を作れば、間接的にではあっても、国が特定の生き方を推奨するメッセージになる。】

私が特に違和感を持った箇所を引用しました。この文章はすべて「女性手帳」導入についての意見です。

内閣府は「女性手帳」について【男性への配布も検討中だと強調し】ていますし、森少子化相も【「妊娠や出産という女性の人生の選択を国が押しつけることはない」とし】ています。

早く産めとか、産まないのは国家の意思に反するとか、そんなことは言っていないんです。あくまで助言のための「女性手帳」なのであって、「人生の教科書」を配られるわけではありません。

仮にそんな教科書が配布されたとしても、私たちが従う義務は無いんです(憲法第十三条が改正されない限りは)。

男性への配布については「検討中」ですが、その段階で女性だけが、と決めつけてそれを理由に反対するのはおかしいと思います。アンコがまだ入っていないアンパンを食べて「まずいアンパンだ」と言うようなものです。

3つめの【こうした問題】とは、【少子化の根本的な原因】となっている【若者の雇用の不安定さや、仕事と家庭の両立の難しさ、待機児童の多さ、教育費の高さなど】です。

これについては【森少子化相は4月、安倍晋三総理から「育児支援、家庭と仕事の両立支援、結婚・妊娠・出産の支援」を少子化対策の3本の矢とする指示を受けた】と記述があります。政府は少子化問題をこの「女性手帳」の配布だけで解決させようなんて思ってはいません。

他の政策も並行してやっていくのは当然のことで、その中で知識をつけてもらうために冊子を配布する政策もやろう、何もおかしいことはありません。

勝手に話を発展させて、女性は国の被害者、というのはいかがなものかと思います。ようやく「男女平等」(私はこの言い方には納得できませんが…求められるべきものは「平等」でなく「正義」だと思うので)が叫ばれるようになった時代ですから、過剰でデリケートになりがちなのは分かりますが。

②自分の人生は自分で決める

私は確かに体は女性として生まれてきましたが、今のところは(今までずっとそうですが)結婚したいとは思いませんし、妊娠出産なんて言ったらそれこそ100%全く考えられません。

そんな考えの女性は…どこにでも、とは言いませんが少しはいると思っています(そう考える理由は私と違うかもしれませんが)。そしてそういう考え方をする人間が劣っているとかおかしいとは思えません。

仮に「女性手帳」が「人生の教科書」的な内容になってしまったとしましょう。『女性は医学的見地からして30歳までに子をもうけるべきであり…』なんて書いてあったとします。

それを読んで「ああ、国の方針はこうなんだな、じゃあ少し無理しても急いで子供をもうけなければ」これじゃあそれこそ「産む機械」です。

国に推奨されたらはいはい、と自分の人生を捧げてしまうのか?今は2013年です。幸い日本は戦時中ではありません。一人一人色々な生き方が認められるようになってきた時代です。ありがたいですね。

この新聞記事の最後の所でトランスジェンダーの人の話が出ていますが、私も「女性手帳」が送られて来たら良い気分はしません。ですがそれで追い詰められたりはしない。

自分の人生、自分の魂ですから、国がどう言ったって変わりません。私の魂は私のものだと自分で分かってれば、冊子くらいでアイデンティティを揺さぶられたりしません。今の私なら「またか、」で済ませられます。

みんなに認められないのが嫌なんて、そんな良い時期は一生のうちどこにもありません。せいぜい産まれた瞬間くらいのもので、いつでも誰かに疎まれたり理解されなかったりします。でもそれは性的少数者だからではなく、ふつうのサラリーマンのおじさんでも同じことです。

たかだか国から手帳一冊送られてきたくらいで人生が操作されるわけがありません。よっぽど感銘を受ければ別ですが。

国が、他人が、自分に何か言ってきたとき、何も考えずにそのまんま受け取ってその通りにするのでしょうか。「多様な人生を尊重しろ」その通りです。だったら自分でオリジナリティ溢れる人生を作っていかなければ。

他人に「多様な人生のうちの一つ」を作ってもらってもそれは自分の人生とは言い難いですからね。

今日の朝刊をパン食べながら読んでいて「ん?」と思ったので、文章にしてみました。

自分で書いた文章ってなかなか相手に伝わりそうかわからないものですね。

こういう政治の絡むような大真面目な文章は書いたことがなかったので、いいきっかけになった記事でした。政治への意見というよりは、報道と人生についての考えですが。

ここまで読んで下さった方、お疲れさまでした!ありがとうございます。