COB最終公演が終わって(思いの丈)

私の人生を変えてくれた命の恩バンド・Children Of Bodomが、事実上の解散を発表した。フィンランドでの彼らの最終公演を見届けた今、改めてCOBへの思いを書いておこうと思う。

COBとの出逢い

時は6年9ヶ月前。私はCOBの4thアルバム「Hate Crew Deathroll」を聴いてしまい、彼らに着いていく!と誓ったのである。

4thを聴く前には、ニコニコ動画やYouTubeでHate Me!を聞いていたり、いくつかのMVを見たりしていた。しかし、いざTSUTAYAで借りたアルバムを一枚通して聴いてみたら…全身を雷が駆け巡るような衝撃を受け、私の心はCOBの元へ一気に引き込まれたのであった。

Needled 24/7から始まる最初の4曲で既に感動していたのだが、トドメを刺したのが5曲目のAngels Don’t Kill。ダークで物悲しい曲調、そこに響くキーボードの音色があまりにも美しくて、「あぁ、これは私の中の何かが変わるんだ。この“初めて聴く”は物凄く大事なんだ」と直感した。心の中には薄暗い教会のような光景が広がり、そこで私はうずくまっていた。洗礼を受けているようだった。そして、トドメを刺された私の人生に鍵をかけたのが、続くTriple Corpse Hammerblowからの4曲だった。

当時私は鬱病にかかっており、もうすぐ社会復帰というところまでは回復していた。しかし、自分の人生に対するビジョンが持てないというか、やる気もやる事もない、お先Emptyな状態だった。

そこにChildren Of Bodomという彗星が現れ、ひとまず進むべき道(COBを追いかけて生気を取り戻す)を示し、行動するためのガソリンまでガツンと入れてくれたのだ。これを救世主と言わずして何と言おうか?

COBがもたらした経験

COBが大好きになったので、毎日彼らの絵を描き続けた。私は幼い頃から絵を描いているので、何かに対する愛情というのは絵で表すことが多いのだ。

描き続けていると、まず当然ながら絵が上達した。そして、絵をTwitterにアップすることで、新しい友人やメタルの先輩ができた。さまざまな人と関わり、友情や愛情や失望について学ぶことができた。

COBを見るために名古屋まで遠征もした。この遠征をきっかけに、一人旅をするようになった。埼玉から北海道までぐるりと回ったり、Darkest Hourというメタルコアバンドを見るためにドイツまで行ったりして、「自分一人でもできることがあるのだ」と自信を付けることが出来た。ずっと実家で暮らし、幼い頃から慢性的な無力感があった私にとって、これは大きな成長だった。

通信制高校を卒業した後は、デザインの専門学校に行くことにした。絵が上達して調子に乗ったのと、やはり私は一人暮らしがしたい、そのためには速やかに就職をするべきだと決めたからだ。

肩の荷

こんな感じでCOBには非常に助けられ、彼らには感謝してもし切れない。ただ、彼らは、私個人に対しては何もしていない。彼らは彼らの仕事をしただけである。だから、「COBが私の人生を変えた」のだが、実際に私の人生を変えたのは私自身だということは承知している。それでも、きっかけとして彼らが存在してくれたことは幸運だ。

これらを前提として、正直に書いておこうと思う。彼らが解散を発表したとき、とても混乱したし残念だと思ったのだが、起こっている出来事を理解したとき、なんだか「肩の荷が下りた」ような感覚になったのだ。

例えば、「COBが来日した時のために有給を死守しておかなければ」とか、「彼らの最新情報をチェックしておきたい」とか、そんなに大きなことではないのだが、これら些細な「気になりごと」が、実は視界を覆っていたような気がした。もしくは、「COBがいなくなったら、どうしよう」という不安が現実に起こって、逆にホッとしたのかもしれない(不安感は実際に起こることよりも大きくなるものだ)。彼らがあまりにも大事すぎて、しがみついていたのだと思う。それこそ、自分の人生よりも重大な存在だと感じていたかもしれない。彼らが解散を発表し、その「重大さ」が私の人生から転げ落ちて、身軽になったような気がした。

彼らが解散することは、非常に悲しく残念だ。しかし、「私の人生」という自由な視界が開けたように感じる。私なんぞはファン歴6年9ヶ月しかないのだが、それでも彼らの存在は非常に重要だった。

最前か後方か指定席か

ブレイクタイム。COBのライブには合計9回行けたのだが、最前4回・前方1回・後方2回・指定席2回と、様々な楽しみ方ができた。この項では、個人的に好きな楽しみ方について書く。

結論から書くと、後方で皆とモッシュをするのが一番楽しかった。二番目が落ち着いて見れる指定席で、三番目が一番近くで見れる最前。なぜ最前が一番じゃないのかというと、これには理由が3つある。

1つ目は、「最前の責任」のようなものを感じてしまうからだ。最前に来たということは、アーティストから一番顔が良く見えるということ。誰に言われたわけでもないのだが、なんとなく「模範的なファン」でいなければならないような気がして、最前で嬉しいのだが、責任のようなものを感じる。後方であれば、そのような感情は起こらず、自由な気持ちで楽しむことができる。

2つ目は、アーティストにとって最前が何度も同じ顔、というのは嬉しいのかどうか分からないからだ。なんて言いながら4回も最前行ってるわけだが。そんなに気にしないだろうとは思いつつ、「また君かぁ」とか思わせたら申し訳ないなぁと思って、フィンランドツアーでは最前はTampere公演だけにしておいた。

そして3つ目は、単純に私が強い光や爆音に強くなく、立ちっぱなしも体力的にしんどいからである。実は、私にとってメタルライブはかなりHPを消費する。その点、指定席で押されずにノンビリ見れるのはありがたい。

そういうわけで、何度も最前を取ってはきたけれど、精神的・体力的に楽なのは後方および指定席なのであった。物事には、何事も良い面と悪い面があるということだな。ブレイクタイムおわり。

人生の仕事

彼らの最終公演に行くことができ、なんだか「人生の仕事」のひとつをこなせたようで、非常に満足感がある。多少良くないことが起こっても、「まぁいいか。私はCOBの最終公演に行けたのだから」と思える。COBの最終公演に比べたら、殆どのことが些細なのである。人生の義務のひとつを無事に果たせて、とても良かったと思う。

人生の仕事といえば、一般的には結婚や出産や定年退職になるのだろう。だから、例えば結婚したら、今の満足感に近い感覚になるのだと思う。これらの中でも、おそらく出産&育児が最も満足感のある「人生の仕事」なのではないかと思われる。本能的に満たされるのではないか。

話が逸れたが、とにかくCOBの最終公演に行けて良かった。ライブ自体も非常に良くて、今まで行ったCOBライブの中で1番楽しかった(2番目は2013年の名古屋公演)。やるべきことをやり終えて、私は今とても安心している。

Kiitos COB

そういうわけで、COBへの思いの丈を書いてきたが、正直文章だけでは伝えきれない(だから私は絵を描くのだと思うが)。COBがもたらした経験は、私を大きく成長させてくれた。昔の自分からは考えられないほど自信がつき、行動的になった。絵は上達し、英語力も多少付いた。COBがいなかったら、私の人生は確実に違うものとなっていただろう。グラフィックデザイナーとして働けていたかどうかも分からない。

Children Of Bodomという一つの章が終わりを迎え、Alexi Laihoは新しいバンドを始める。アレキシの新バンドは、それはそれで楽しみではあるが、Children Of Bodomとは完全に別物だと感じる。脱退したヤスカ、ヘンカ、ヤンネがこれから何をするのかは分からないが、まずはChildren Of Bodomの5人…いや、元メンバーを含めた7人に、「ありがとう!」と言いたい。彼らは間違いなく私のヒーローだ。COBが終わっても、Hate Crew魂は不滅だ!