「人類の三大発明」とか「偉大な発明ランキング」というと、だいたいは以下のような並びである。
- 火の利用
- 言葉、文字
- 車輪
- 活版印刷
- 蒸気機関
- 電気の利用
- 抗生物質
- インターネット
- 人工衛星
これらの発明は確かに大変偉大であり、これはこれで良いと思うのだが、今回は別の視点から「三大発明」を考えたい。
その視点とは「自然の摂理に逆らう、実に“人間らしい”発明」だ。
普段は人間のことを「ヒト」と呼んで皮肉るような語り口の私だが、別に人間が特別嫌いなわけではない。人間もまた、他の生物たちと同じ「存在させられてしまったもの」なのである。
遺伝子や地球環境という一種のエコシステムに逆らうような態度、いわゆる“自然”を捻じ曲げるような発明、これが今回スポットライトを当てたい概念である。
私は、人類が歴史の中で“自然”に逆らうような発明をしてきたことを、大変喜ばしく、嬉しく、称えるべきことだと思う。これらの発明によって結果的に人類や他の生命が困ることもあるかもしれず、それは残念なことだろうが、発明したこと自体・打ち破ってやろうと画策した態度は素晴らしい。これは皮肉ではなく(SDGsへの皮肉ではあるだろうが)、本心からそう思っている。
遺伝子編集(ゲノム編集)
三大発明ではなく「No.1」を決めるとしたら、間違いなくコレになるだろう。頭一つ抜けた、最強の“人間的発明”である。
流石にまだ人間に対しての遺伝子編集というと実用見込みがないが、農作物については既に実用化されている。
「遺伝子」という、我々に苦痛をもたらす諸悪の根源を上から改造してやるというのは、実に痛快だ。果実や肉の量が増えるとか、扱いやすい穏やかな性格が増えるなどのメリットよりも、遺伝子を直接改変するという、ともすれば“非人道的・非道徳的”などと言われかねない、直感的には倫理心に反するような行為自体に喜びを感じる。倫理に反すると感じるのも、所詮これまでの生命の歴史の中でそのように淘汰されてきたからに過ぎないのだ。
ゲノム編集技術の説明を読むと「これまでより安価で効率的」などと書いてあって面白い。生命の進化の歴史を書き換える方法について、資本主義の文脈から評価をしているのは、良くも悪くも人間的である。
とはいえ、これを「最高の技術だ!」と感じるのも、結局は遺伝子の仕業なのが悲しいところだ。
ハーバー・ボッシュ法
農作物は土壌から栄養を吸い上げて成長するので、収穫後の土壌は栄養量が減る。また、いつも同じ農作物が植っていると、それを好む虫や菌が増えていく。そのため、似た(近縁の)農作物を同じ場所で連続して育てると、生育が悪くなる(連作障害)。
虫や菌については農薬の進化やその他の工夫で補っているが、土壌の栄養素の革命を起こしたのが、この「ハーバーボッシュ法」だ。
植物が成長するには「窒素・カリウム・リン」の3栄養素が必要だが、「ハーバーボッシュ法」は「窒素」を空気から取り出して肥料にする技術である。カリウムとリンについてはまだ生成技術がないが、土壌の栄養問題がある程度解決し、農作物の収穫量は飛躍的に増加した。
空気からパンを作る ~アンモニアの話~ つくばサイエンスニュース
詳細な説明は専門家の文章を読んでほしいのだが、要するにハーバーボッシュ法は、地球のエネルギー循環サイクルを人工的に改変しているのだ。土壌に植物が生え、そこに虫が来て、それを食べる鳥が来て、ウンチが肥料となって、また植物が育つ。このサイクルを回すことなく、空気中からドンドコ栄養を充填しまくり、ヒトの個体数を爆増させている。これもまた独善的で近視眼的な、実に人類らしい発明である(ハーバーとボッシュを批判しているわけではなく、人類全体への皮肉)。
体外受精
この枠にはピルやコンドームなどの「避妊技術」もまとめてよいと思う。性欲→性行為→妊娠→出産、という、自然淘汰の結果としての因果を断ち切ったり、逆に自然淘汰されていたはずの遺伝子を無理やり繋いだりする行為だ。自然淘汰は肉体や知能の性能にかかわらず「たまたま」起こるものなのである。
実際にどのような施術をするのか調べてみたが、正直「いや、ここまでして子供が欲しいかね・・・」「ヘロヘロの精子がなぜか来れてて草」みたいになる。私は内臓の図解で気分が悪くなるタイプなので、調査は1分しか持たなかった。
出生率減少の原因について、経済的要因や価値観の変化が挙げられているが、そもそも少子化が起こる最も根本的な条件とは、コンドームやピルを庶民が安価で入手できることだ。「避妊をする」という選択肢があること自体が、どうやっても少子化に結び付く。
まぁ私は少子化がそこまで悪いことだとは思っていない。「人間が働く前提の社会システム」だから少子化に実害があるのだ。将来、核融合発電や安価なロボットなどの普及によって人間が働く必要が極端に減少し、あるいは先述のカリウムやリンの枯渇によって人口が大減少し、資本主義のエコシステムが崩壊すれば、労働力も税金も意味をなさなくなり、少子化は特に問題ではなくなる。「ポスト資本主義」について長いこと考えても良い案は思いつかないのは問題だが・・・。
少子化よりも大きな問題は、これまでの歴史を見てもそうであるように、生活レベルの停滞に満足できず、抜け駆けしようとする競争的な奴がいることである。だからやっぱり遺伝子編集が最強だ、という帰結に戻ってきたところで、この記事は終わりにしたいと思う。
