「もしも、宇宙が始まる前の完全状態が永遠に続いていたら」と言うタイミングがない問題

手短な思考実験。ドラえもんの最強ひみつ道具「もしもボックス」や「ソノウソホント」で、かねてから私が「こうだったらよかった」と主張している「宇宙が始まる前の完全状態で永遠に静止している」を実現できるとしたら、やりますか?いつ言いますか?という話。

リアルに想像してみると、「うーん、せっかくなら、もう少し夫と過ごしてからが良い」となり、即座に言う感じにはなり難い。当然、私以外の人も「今すぐ無に帰せるとしたら、その前にやっておきたいこと」があるだろう。人間以外もそうだろう。しかしそれと同時に、今まさに病や捕食といった苦痛にあえぐ生物も溢れかえっているのだ。

そう考えると、いつ宣言して全員を無に帰すべきなのか、答えが出なくなる。功利主義的にいえば、今すぐ無に帰すべきだ。しかし仮に全生物にアンケートをとったとしたら、「今すぐ」は大反対されるに違いない。みな、家族や友人に別れの挨拶をしに行く時間を欲しがるはずだ。腹の中の子に会いたい、成長を見たいという者も大量に出てくるだろう。その間にもどんどん新しい命が生まれてくる。いったいいつまで待てば良いのか?

これは生物という(邪悪な)仕組み上、仕方がないことである。生まれてきてしまったが最後、自分がよりよく生きたくて仕方がなくなるのだ。生まれてきた者にとって、わが存在の消滅とは最も避けるべき悪である。

「元々全てがなければ良かった」と「今から全てがなくなれば良い」は、全く違うということがよく分かる思考実験であった。


以前から私が主張しているのは、言うまでもなく前者であり、「だから〇〇する(絶滅、生まない等)」には繋がらない。だから私は、エフィリズム的感覚ではあるが反出生主義ではないのだ。皆すでに生まれてきてしまったので、どうしようもない。遠い遠い未来でまた「全てがない状態」が訪れるとは思うが、長い時間を経てまた「何かが発生」してしまうだろう。この因果法則が壊れる時が来るのかは分からないが、小さな我々はそれを無意味に望むことしかできない。