「芸は身を助く」というが、それと同時に、芸は心を守るものでもある。
仕事で「芸」を活かしたり、副業として小遣いを稼げるという意味で、芸は積極的に活かすことで評価や年収の向上につながる。
もう一つの「芸」の使い方として、「芸を活かした仕事を任されることで、やりたくない仕事をせずに済む確率が上がる」がある。これは心を守ることに繋がる。就職活動で営業職にならずに済むために、簿記や秘書検を取るというのが一番メジャーだろう。
ただ就活や仕事以外の催しなどにおいても、何か得意な仕事があれば「得意ならこいつにやらせておこう」となる。その得意な仕事をしている間は当然両手が塞がっているので、他の仕事が入らなくなる。そのおかげで、やりたくない仕事をさせられる確率が大幅に下がるのだ。
就活や「将来の夢」はたいてい能動的な「これがやりたい・興味がある」という観点から語られる。しかし実際の社会生活においては、むしろ「絶対にやりたくない仕事を、高確率でしなくて済むスキル」を考えた方が、人生の満足度が高くなりそうである。
例えば営業職をやりたくないなら、一般企業の営業では役に立たないが、他の分野では確実に役に立つ資格を取ることだ。宅建や秘書検よりも、危険物取扱者やフォークリフトの方が良いし、独占業務のある医師や弁護士はより安全である。
私の場合はなんの資格もないが、絵を描いたりデザインを作ったりカメラ撮影をするという独自の役割を与えてもらうことで、集団内での役割を果たしたことになり、向いていない仕事をする回数が明らかに減っている。
思い返せば、私は小学生時代からこんな生き延び方をしていた。体育祭では走るのが遅い上にコケて大迷惑をかけたが、クラス旗を描いたおかげでそこまで責められずに済んだ。「あいつはああいうタイプだから仕方ない」と諦めてもらえれば勝ちなので、不得意なことを諦めさせる代わりとして差し出すスキルがあれば、ディールとして飲ませやすいのである。
得意な仕事をさせてもらえれば、自分の気が楽なうえに、他の人より上手くできるから感謝までされる。嫌な仕事を苦痛を感じながらやった結果、全然うまくできなくて残念がられるのとは正反対である。特技の有無は、いわゆる自己肯定感や生きやすさにも直結する。まぁ特技があってもうつ病にはなったが、もし何もなければ、さらに大変な人生だったに違いない。
